インスリノーマ
インスリノーマは、膵臓(すいぞう)の腫瘍で中~高齢のフェレットによく見られます。
インスリンは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種で、血液中の糖分を体の細胞に取り込ませる働きがあります。
インスリノーマのフェレットでは、腫瘍化した膵臓の細胞からインスリンが多量に分泌されることにより、血糖値(けっとうち)が低下し、さまざまな症状を引き起こします。
症状
ぐったりする | 前肢で口の辺りを引っかく | 後肢がふらつく |
軽いものでは、寝る時間が長くなるだけのものから、ボーっとしてよだれを流したり、後肢が弱る、ひどくなると、昏睡状態におちいったり、ケイレンを起こすこともあります。
診断
血液検査をして血糖値が低いかどうかを調べます。血糖値が60mg/dl以下ならこの病気が強く疑われます。
症状が軽度の場合は、3~4時間絶食した後に血糖値をはかることもあります。
確定診断は病理検査によって行われます。
治療
■内科療法
プレドニゾロンというお薬を飲ませ、肝臓での糖新生を促進し、末梢組織での糖の利用を抑制することにより、低血糖の症状を抑えます。
低血糖による症状を抑えるだけですので、生涯にわたる治療が必要になります。
■外科的治療法
インスリノーマの腫瘤は、多くの場合非常に小さく、顕微鏡でないと分からないくらいの病変が膵臓全域に、びまん性に広がっています。
このため、肉眼で分かる病変を手術で取り除いたとしても、内服薬を続けなければならないことや、症状が再発することがあります。
しかし、内科療法のみより、外科療法の方が、平均生存期間が長くなるという報告もあります。
■食餌療法
初期の段階で診断された場合、および手術で腫瘍を取り除いたあとは、食餌療法のみである程度の期間症状をコントロールできることもありますが、基本的には内科療法と組み合わせて行います。
甘いおやつや、炭水化物の多いエサは、インスリンの分泌を刺激し、低血糖を引き起こすので与えないようにします。
いつも食べているエサをいつでも食べられるようにおいておき、長時間エサがない状態を避けるようにします。
また、血糖値を一定にするために、たんぱく質を多く含んだエサを1日に2,3回から5,6回、定期的に摂取するよう促す必要があります。
副腎疾患
中~高齢のフェレットによく見られる病気で、腎臓の近くにある、副腎という左右1対の小さな器官が腫瘍化または肥大化します。
異常を起こした副腎からエストロゲンなどの性ホルモンが過剰に分泌されることにより、脱毛やかゆみ、メスでは陰部の腫大、オスでは、前立腺の肥大により尿が出にくくなるなど、様々な症状を示します。
症状
脱毛 | メスの外陰部の腫脹 | 去勢済みのオスの前立腺疾患 |
その他、体臭がきつくなる、尿漏れ、攻撃的になる、乳頭が目立ってくるなどの症状が出る場合もあります。
診断、治療
■超音波検査
超音波で副腎の大きさや厚み、血管との位置関係などを評価します。
簡単で侵襲性の低い検査で、手術の際、比較的簡単に切除可能な左副腎が悪いのか、大きな血管に隣接していて切除しにくい右副腎が悪いのかが分かる利点があります。
反面、腫大していなくても腫瘍化している可能性や、リンパ節などを副腎と見誤る可能性もあります。
■ホルモン検査
副腎疾患のフェレットは、特定の性ステロイドホルモン(エストラジオール、17αヒドロキシプロゲステロン、アンドロステネジオン、DHEA-S)の血中濃度の上昇がみられます。採血をしてこれらのホルモン値を測り、正常値と比べることで診断します。
ホルモン検査の費用が高いこと、正確性に問題があるなどの問題点があります。
■試験開腹術
開腹手術をして、実際に肉眼で副腎に異常があることを確認し、異常があればそのまま摘出します。
■診断的治療
ホルモン注射を打って、症状が改善するかどうかを確認します。
フィラリア症
フィラリア症は犬の病気として有名ですが、フェレットにも感染する病気です。フェレットは犬に比べ体が小さく心臓も小さいため、1~2匹の感染でも重篤となってしまいます。そして感染した場合、治療はとても困難です。 安全で有効な予防薬があるので、フィラリア症の予防をお勧めします。
フィラリア感染のしくみ
フィラリア症は感染した動物の血液を吸った蚊に刺されることによって感染します。
フィラリアの幼虫はフェレットの体内で成長しながら、3~4ヶ月かけて心臓まで移動し、心臓に寄生し、心不全の原因となります。
症状は、疲労倦怠、咳、呼吸困難、腹水などがみられます。
また、幼虫が血管や心臓の血液の流れを障害し、突然死を起こすこともあります。
フィラリア症の予防
フィラリアの予防薬は、蚊を媒介に体内に入ってきたフィラリアの幼虫を殺す薬です。
投薬は蚊が出始めた頃から、蚊がいなくなって1ヶ月後まで、毎月1回です。